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2015年10月22日 (木)

『浮草』

小津安二郎監督の作品は「東京物語」「早春」などの代表作は見ていたが、「浮草」は初めて見た。
他の小津作品とは少し趣が違った。
これは小津監督のホームグランド松竹ではなく、大映で作られた映画だ。そのせいか、配役もいつものお馴染みとは違い、京マチ子、若尾文子、中村鴈治郎、等が出ている。撮影も宮川一夫である。

この違いは作品全体に大きな影響を与えた気がする。
小津作品はサラリーマンが主役のことが多いのだが、これは旅芸人一座の話で、関西弁である事も含め、他の小津作品よりも親しみやすく、かなりエンターテインメントだ。

主役の三人がとてもいい。
京マチ子と中村鴈治郎が、大雨の中、路地を挟んで喧嘩するシーンが素晴らしい。
若尾文子が、京マチ子にそそのかされて川口浩を誘惑するところもいい。若尾文子がいきなりキスをするのは、日本映画としては異例な感じで、ドキッとする。
この三人の芝居以外に、映画全体に他の小津作品と違う何かを与えているのは、宮川一夫の撮影だろう。何が違うと言いづらいのだが、他の作品とは明らかに違う映像なのだ。
前述した雨のシーンは宮川氏の発案だそうだ。小津作品はローアングルで有名だが、この作品には1カットだけ俯瞰がある。旅芸人が町を練り歩く場面で、それも宮川氏の発案だそうだ。

小津監督は宮川カメラマンをとても気に入り、その後も何度か一緒に仕事をしようと試みたそうだが、五社協定に阻まれ、実現しなかったそうである。
実現していれば、もっと違ったタッチの小津作品が見られた気がする。

映画製作の不思議さを改めて感じた作品である。

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