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2015年10月

2015年10月27日 (火)

『美しき絵の崩壊』

アマゾンでDVDを買うようになって、今までなら絶対に買わなかったであろう作品を買うようになった。その中の一つが『美しき絵の崩壊』という作品。
ナオミ・ワッツとロビン・ライトが出ているというだけで買ったのだが、これが何とも不思議な作品であった。

二人は昔からの親友で、それぞれ結婚して息子をもうける。同世代の息子達は、すくすくと育って今や筋肉ムキムキのイケメン・サーファーである。
あるとき、ナオミ・ワッツの息子がロビン・ライトと関係を持ってしまう。お返しとばかりにナオミ・ワッツはロビン・ライトの息子と出来てしまう。

この奇妙なというか、都合の良い4人の関係こそが「美しき絵」なのだろうが、やがて息子たちに若い女が出来て、それは崩壊し、孫が出来たりする。しかし、4人は皆、その4人でいることを密かに望んでいて、最後には再び4人の関係に戻っていく。

何とも都合のいい話で、マザコンと近親相姦と若い愛人望がこれでもかと爆発し、自制心もそれこそ崩壊していき、妄想のままにエンディングを迎えるという何とも凄い作品なのだ。
それでも何となく見てしまったのは、役者達が美しく、演出も上品で文芸作品的だからだ。

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『オール・ザット・ジャズ』

『オール・ザット・ジャズ』を久しぶりに見た。

 

ミュージカルの演出家であり映画監督でもあったボブ・フォッシーの監督作品である。この人の作品では『レニー・ブルース』が大好きで、映画館で何度もみた。

 

『オール・ザット・ジャズ』は彼の自伝的な作品で、フォッシー本人をモデルにした主人公が、新作ミュージカルの制作準備と同時に、あきらかに『レニー・ブルース』だと分かる映画の編集をしている。

 

この手の伝記物にありがちだが、ショービジネスの厳しさと並行して、離婚した妻や子供、女たちとの情事、ドラッグにまみれた生活が描かれる。全体的にはドキュメンタリータッチの映像で、冒頭のオーディション風景はそれが上手く機能していて、実にすばらしい。ところどころに彼の幻想シーンが挟み込まれるが、これは明らかにフェリーニの影響を受けていて、自伝的という意味でも『8½』に似ている。

 

後に『8½』をミュージカルにした『ナイン』という舞台作品が出てきて、映画にもなっているのだが、結果的に『ナイン』と『オール・ザット・ジャズ』は良く似ている。 フェリーニ的なところは、やはりフェリーニの方が上手いと思うが、素晴らしいのはやはりボブ・フォッシーの振り付けである。映画の中盤に出てくる「エア・エロチカ」というナンバーの振り付けはまさしくフォッシーのタッチで、シンプルでセクシーでスタイリッシュ。圧巻である。

 

最後は自分の死を演出するという形になっていて、学生のころに見たときには、あまりピンとこなかったが、改めて見るといろんなことがよく分かる。

 

映画の編集が上手くいかなくて悩んでいるときに「キューブリックでも悩むことがあるのかな」と主人公がぼやくシーンがある。個人的には最も印象に残るセリフだった。 全体的に以前に見たよりも面白く感じたのは、自分が年をとったせいなのか?

 

 

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2015年10月22日 (木)

『浮草』

小津安二郎監督の作品は「東京物語」「早春」などの代表作は見ていたが、「浮草」は初めて見た。
他の小津作品とは少し趣が違った。
これは小津監督のホームグランド松竹ではなく、大映で作られた映画だ。そのせいか、配役もいつものお馴染みとは違い、京マチ子、若尾文子、中村鴈治郎、等が出ている。撮影も宮川一夫である。

この違いは作品全体に大きな影響を与えた気がする。
小津作品はサラリーマンが主役のことが多いのだが、これは旅芸人一座の話で、関西弁である事も含め、他の小津作品よりも親しみやすく、かなりエンターテインメントだ。

主役の三人がとてもいい。
京マチ子と中村鴈治郎が、大雨の中、路地を挟んで喧嘩するシーンが素晴らしい。
若尾文子が、京マチ子にそそのかされて川口浩を誘惑するところもいい。若尾文子がいきなりキスをするのは、日本映画としては異例な感じで、ドキッとする。
この三人の芝居以外に、映画全体に他の小津作品と違う何かを与えているのは、宮川一夫の撮影だろう。何が違うと言いづらいのだが、他の作品とは明らかに違う映像なのだ。
前述した雨のシーンは宮川氏の発案だそうだ。小津作品はローアングルで有名だが、この作品には1カットだけ俯瞰がある。旅芸人が町を練り歩く場面で、それも宮川氏の発案だそうだ。

小津監督は宮川カメラマンをとても気に入り、その後も何度か一緒に仕事をしようと試みたそうだが、五社協定に阻まれ、実現しなかったそうである。
実現していれば、もっと違ったタッチの小津作品が見られた気がする。

映画製作の不思議さを改めて感じた作品である。

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