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2014年7月

2014年7月 4日 (金)

『ジェーン・オースティン』な日々


ジェーン・オースティン関係で初めて見た映像作品は『ジェーン・オースティンの読書会』という映画だ。
『読書会』なるものがどんな風に行われているのか知りたくて見たのだが、恥ずかしながらオースティンの小説を読んだことがなかったので、細部がよく分らなかった。
 
オースティンは19世紀初頭に活躍したイギリスの小説家で、生涯に6本の長編小説を残している。
映画の中では、五人の女性と一人の若い男性が毎月一本ずつ決められた小説を読み、それについて皆で議論をするという形で物語が進む。
オースティンファンの女性達の中に一人だけ紛れ込んだ若い男は、実はSFファンでオースティンを読むのは初めてだ。彼は全6作が合本になった巨大な本を抱えてスポーツタイプの自転車で現れる。
彼と、年上のオースティンファンの女性とのラブストーリーが中心となり、その他にも読書会メンバーの不倫や友情や夢や挫折など様々なドラマがパラレルに描かれる。
 
「オースティンを読む男性は善人」という視点が貫かれていて、結局、オースティンを知らないとよく分らない部分がある。
 
と言うわけで、ハードディスクの中に眠っていたオースティン原作の映画を見ることにした。
『ブライドと偏見』、『いつか晴れた日に』の二本だ。
 
『いつか晴れた日に』はとても面白かった。
原題が「分別と多感」などと訳される' Sense and Sensibility'の映画化で、アン・リーが監督をしている。
主演はエマ・トンプソンとケイト・ウィンスレット。他にヒュー・グラント、アラン・リックマンなどが出ている。
エマ・トンプソンは脚本も書いていて、力が入っている。
どのキャストも素晴らしいが、正直に言うとエマ・トンプソンが一番のミスキャストだ。
エマの役はヒュー・グラントと恋に落ちるのだが、姉と弟の様に見えてしまうのだ。
初の外国映画であったアン・リーの演出は素晴らしい。その後の活躍もよく分る。
 
『プライドと偏見』はキーラ・ナイトレイ が美しすぎる。
というより彼女だけが現代モデル風に見えてしまう。父親役のドナルド・サザーランドは素晴らしかった。
 
その後、BBCが製作したジェーン・オースティン・ドラマのボックスセットの存在を知り、さっそく手に入れて、『高慢と偏見』『分別と多感』『エマ』の三本を見た。
 
『高慢と偏見』は放送当時イギリスで一大ブームとなった作品で、ダーシーを演じたコリン・ファースはこれでスターになった。確かに当たり役と言っていい。実に似合っている。『風と共に去りぬ』のクラーク・ゲーブルを思い出した。
映画版の『プライドと偏見』よりも、全般的にキャストが役に合っている。
物語も、時間が長い分、細部まで描かれていて、同じ原作の映像化としては、こちらに軍配を上げたくなる。
 
『分別と多感』は『いつか晴れた日に』と同じ原作である。
こちらも長さが有利に働き、物語がより深く理解出来る。しかし美術や映像の迫力は、映画版が上かも知れない。
エマ・トンプソンに感じだミスキャストは、こちらにはない。
妹とその恋人は現代風な顔つきだが、逆にそれが保守的な姉の恋愛と対比され、効果を発揮している。
その若者ウィロビーを演じた役者は、どこかで見たことがあると思ったら、映画『17歳の肖像』に出ていた。
 
『エマ』は以前にグイネス・パルトロウ主演で映画化されている。
エマは他人をカップリングするのが大好きだが、その割に恋愛心理に疎くて、間違った相手をカップリングしたりする。やがて自分の恋愛心理に気づき……というコメディだが、若きパルトロウが実に可愛く演じていて、楽しい映画だった。
BBC版のヒロインはパルトロウに比べると美しさでは劣るが、お節介なキャラクターとしては、パルトロウよりも雰囲気が合っている。
 
そんなわけで、オースティンの6作品のうち3作品を、映画版とBBC版で見たのだが、印象に残っているのはBBC版の質の高さだ。
BBCが作ったエピックドラマは、シェイクスピア原作なども含めて以前にも見たことがあるが、正直、衣装をまとった再現ドラマのようにしか見えなかった。
しかしここ最近のレベルアップは目を見張る物がある。
ターニングポイントとなったのは『高慢と偏見』らしい。
脚本、演出、そしてキャスティング、全てがレベルアップしている。映像もハイビジョンになり、横長のビスタサイズに近くなり、劇場用映画と比べても遜色がない。
そして、映画よりも時間が長いせいで、原作を損なうことも少ない。
このレベルのドラマがテレビ放送で見られるのは素晴らしいが、これでは映画館に来る人はますます減るなあと思ってしまった。
 
その後『ジェーン・オースティンの読書会』を再び見る。
今度はかなりよく分った。
 
若い男が、「自分が好きな本も読んでみてよ」と年上の女性にSF小説を手渡す。ル・グインの『闇の左手』だ。
SF小説は苦手だという彼女に、「でも僕だってオースティンのようなガーリー小説(少女向け読物)を読んだんだから」というと、「オースティンはガーリー小説なんかじゃないわ」と反論される。
「もちろん、今では僕もそう思っている。だから君もル・グインをただのSF小説だと思わないでくれ」と彼は再反論する。
その後、くっついたり離れたりと色々あった後、やっと彼が貸した『闇の左手』を彼女が読む。
そして二人は初めて結ばれる。
という展開は上手いと思った。
 
読書の趣味はその人となりを表す。
そして、他人が推薦する本を読むことによって、相手に対する偏見を払拭し、互いに理解を深める。
『読書会』を利用した、上手いエピソードだと思った。
 
 
その後、私は小説版『高慢と偏見』に挑戦しています。
 
 

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