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2011年8月29日 (月)

テレビVS映画

映画とテレビドラマってどう違うんですか、と聞かれる事がある。

この二つ、音と映像を使って物語を伝えるという点では良く似ているが、実はかなり違った性質を持っている。

 

テレビは部屋で見るが、映画は映画館で見る。テレビにはCMがあるが、映画にはない。テレビの画面は小さく、映画の画面は大きい。誰もが思いつく表面的な違いは、こんなところだろうか。作り手の間では、テレビは音(セリフ)が重要で、映画は映像が重要だと言われている。

 

 私が脚本の勉強を始めた頃、シナリオの教則本には、こう書かれていた。「クライマックスにはセリフが少ない方がいい。もし物語の最後まで来て、長いセリフが必要だとしたら、それまでにテーマを描ききれていないからだ」

 確かに名画といわれる作品のクライマックスは、短い印象的なセリフで締めくくられている。だらだらと喋る主人公は少ない。だから私もそういう脚本を書くように努力した。しかし、テレビの仕事をやるようになって、プロデューサーに言われた事は、クライマックスにセリフを増やしてくれ、という事だった。改めて、世間で面白いといわれているテレビドラマを見ると、確かにセリフが多い。クライマックスと言うのは、主人公が一番沢山セリフを喋るシーンだと言ってもいいくらいだ。

 

「私は映像という物を信用していない。さらに言えば、役者の芝居も信用していない。だから全てセリフに書いてしまう」と言ったのは、ドラマ界で有名な脚本家の一人だ。

 

 

一方、「映画はトーキーになりセリフを手に入れたが、それと引き換えに多くの物を失った」と言ったのは、映画監督スタンリー・キューブリックである。

 

 

 

 

この違いはどこから来るのだろう、と考えていて、ふと思い当たった。

映画は生まれたとき、サイレントであった。つまり音もセリフもなく、映像だけでストーリーを語るメディアであった。一方、テレビはラジオ放送から始まっている。テレビドラマより先に、ラジオドラマがあった。つまり、映像に音がついたのが映画であり、音に映像がついたのがテレビなのだ。

 

 

 

大学を卒業後、私が入社した映画会社は、その頃まだ沢山の映画を作っていた。やがて映画事業の業績が悪くなり、制作を打ち切るようになる。私も時を同じくしてテレビの仕事を始めるようになった。

俺はテレビはやらない。映画しかやりたくない。そう言って、頑としてテレビの仕事をやらない者もいた。あの頃、日本では、テレビドラマと映画の間には見えない壁があった。

最近は、「踊る大捜査線」に代表される様に、テレビでヒットした作品が映画化される事が多い。私も「ナースのお仕事」のテレビドラマをプロデュースし、後に映画化もしている。逆に映画で当たった物をテレビドラマにする事も盛んだ。

 

 

 

気がつくと、その年に最も多くの映画を作ったのはテレビ局だった、なんて時代になっている。

 

映画会社出身者としては複雑な思いもあるが、どんなメディアであれ、自分のオリジナルな作品を発表していくことが大事だと思っている。

 

 

 

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